機会には限りがある

千葉・幕張の街に根を下ろすIBM BIG BLUE。コーポレートカラーの青を背負い、美浜区を本拠地として、日本一決定戦・ライスボウル制覇を目指して日夜練習に励んでいる。

IBM BIG BLUEは1976年、社内の有志数名によるアメフト同好会からはじまった。Xリーグ創設の1996年には2部リーグに位置したが、2001年シーズン終盤、わずか1点差の激戦をものにして1部昇格を決めた瞬間は、チーム史に刻まれるドラマとなった。その後2010年に名将・山田晋三氏がHCに就任し、2016年のパールボウル初優勝を経て、東日本を代表する強豪へと成長を遂げる。

2019年には日本IBMスポーツ株式会社を設立し運営基盤を強化、2020年には幕張への拠点移転で新たなステージへと踏み出した。2024年、IBM BIG BLUEの指揮を執ることとなったマイク・フェアー氏は、米NCAAやNFL、CFLで20年以上にわたり指導経験を重ねてきた大ベテラン。インタビューで彼が語ったチームの課題は、意外にも「基盤の再構築」だった。

「どんなに優れた人材が揃っていても、日々の努力の積み重ねなくして勝利はありません。ひとつひとつ、こなすべき練習に全力を注ぐ。それがチームの基盤づくりの要であり、そして私の信念でもあります」

そんな冷静沈着な指揮官を擁しているIBM BIG BLUE。運営責任者としてチームを率いる松本宗樹社長は、現役時代に副将、主将を務めただけでなく、大学院でマネジメントを学んだキャリアを持つ。2024年6月に社長としてチームに復帰した松本は、従来の社員選手だけでなく他社や海外からの選手も受け入れる「ハイブリッド型」を提唱。「異なる背景を持つ選手を組み合わせることで、新たな化学反応が生まれます」と松本は語る。

IBM BIG BLUEは現在地域連携にも力を入れ、小学校でのフラッグフットボール授業や地元清掃活動、ショッピングモールでのファン交流イベントなどを通じて、幕張とともに歩むクラブ作りを推進している。松本はさらに、IBMが世界的スポーツイベントで培ってきたデータ分析・AI技術をIBM BIG BLUEにも応用する施策を推進中だ。選手のフォームや連携の微細なズレを可視化し、緻密なトレーニングメニューを設計。競技人口減少の波に抗い、テクノロジーでアメフト界の未来を切り拓こうとしている。

創部から半世紀以上、多くの紆余曲折を乗り越えてきたIBM BIG BLUE。まさに新たな章の入口に立っていると言える。松本が推進する多様性・テクノロジー戦略を背景に、フェアーが最前線でチームをまとめ上げることで、日本一への道が一層鮮明になることは間違いない。そして松本が最後に示した言葉が、チームに込める思いを端的に表している。

「人生迷ったら、自ら足を進めて扉を開く勇気を持つしかありません。挑戦の機会は誰にでもあるわけではないんです」

IBM BIG BLUEは、これからも新たな一歩を刻み続ける。

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