挑戦する心が未来を切り開く

地方都市の現実は、静かに、だが確実に重みを増している。超高齢化社会—。熊本県八代市も例外ではない。人口12万人のうち、実に4割が高齢者である。この街で、地域医療の新たな形を模索し、奔走する男がいる。一期一会訪問看護リハビリステーションの代表、鐵井博昭だ。彼は、利益や効率だけでは語れない、現場のリアルと向き合い続けている。彼を突き動かすものは何なのか。それは、自らの心を燃やす使命感と、一歩を踏み出す勇気である。

看護学校を出た鐵井は、熊本市内の救急病院で10年間、文字通り命の最前線に立っていた。救急部の主任という重責を担い、ひたすらに技術と精神を磨いた。30代を迎えたとき、彼は故郷である八代に戻る決意をする。市の中核病院に就職し、そこでさらに10年、今度は循環器分野の看護に没頭した。

転機が訪れたのは、その後に勤めたクリニックでのことだった。彼はそこで、残酷な現実を目の当たりにする。かつて元気に受診していた心不全の患者たちが、わずか1ヶ月後に信じられないほど状態を悪化させてやってくる。在宅で適切な管理ができず、病状が進行していく姿だった。

「疾患が在宅でどんどん悪くなっているという姿を目の当たりにして、結局この在宅に僕たちが介入することで、この負のスパイラルに微力ながら貢献できる」と鐵井は語る。

その思いが、彼に起業を決意させた。訪問看護ステーションの立ち上げである。単なる訪問看護ではない。心不全療養指導士や血管診療技師など、専門資格を持ったスタッフを集め、自らの強みである「循環器分野」に特化した独自のサービスを作り上げた。居宅介護支援事業所も併設し、ケアプランの作成から訪問看護までを自社で一貫して行うことで、利用者の窓口を一本化した。

順風満帆に見えた事業だが、過酷な試練が彼らを襲う。熊本地震である。夕方に発生した震度6強の揺れは、八代の街に壊滅的な被害をもたらした。利用者の家は倒壊し、彼らの施設も大きなダメージを受けた。自身のスタッフやその家族の安全も確保しなければならない。極限状態の中で、鐵井は一つの決断を下す。

「困った人に手を差し伸べる仕事でもあり、利用者の安全を一番最優先し時間かかっても訪問に回り安否確認を行なっていった。」と鐵井は当時を振り返る。

彼らは訪問を休むことなく、時間をかけてでも利用者の安否確認に回った。全壊した家屋から家族が引っ張り上げられる惨状も目にした。「家は復旧など手段はあるが、命は何にも代え難い」—その言葉には、医療者としての揺るぎない覚悟が滲んでいる。

現在、彼のステーションではスタッフが直行直帰という自由なスタイルで働いている。「昼休憩は必ず戻ってこないといけないとか縛りはないんですよね」と鐵井が語る通り、スタッフの自主性を重んじる環境が、かえってチームワークを強固なものにしている。事務所に集まれば自然と会話が弾む、風通しの良いアットホームな空間だ。

パンデミックを経て、超高齢化社会はさらに加速している。心不全の患者は今後も増え続けるだろう。だが、鐵井の歩みは止まらない。彼の視線はすでに、地域に根ざした「在宅心不全管理センター」の構築へと向けられている。

「何でもすぐに諦めてしまうと人間そこで成長が止まる。成りたい自分の姿、ビジョンを追い諦めず一つ一つ挑戦していく心が自分の理想に近づいていく。」と彼は静かに、しかし熱を込めて語る。

挑戦する心が、未来を切り開く—。 鐵井博昭のその信念がある限り、八代の街には今日も、命を支える確かな光が灯り続けるのである。

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