“The value of a man resides in what he gives and not in what he is capable of receiving.”;人の真価は、手にできるものではなく、差し出したものに宿る、とアインシュタインは残した。株式会社evergreenの歩みは、その方程式を証明する長編ドキュメンタリーかもしれない。
ロジックを枝葉に忍ばせた株式会社evergreenのロゴは、創業者・石井陽介が描く“常緑”の理想形だ。フレッシュで、明るく、力強く。関わるすべての人がそんな状態で在るために、グループは介護、飲食、自動車販売、軽リフォームまで多岐に事業を伸ばしてきた。
石井が最初に「価値」を意識したのは中学時代。バブル崩壊後、再婚した父が昼は店を守り、夜は警備員として働き続ける背中を見た。「母と僕のためだ」と語る母の一言が胸に残った。疲弊しながらも、家族を支えるその姿を、少年は “かっこいい大人” だと感じた。
やがてIT企業の社長となった石井だが、ある転機で会社を離れ、身ひとつに戻ったタイミングがあった。周囲を見渡すと、事業課題に悩む経営者たちがいた。そんな彼らに、石井は寄り添うことを決意する。「異業種であっても、困っている周りの経営者さんをなんとか助けていきたい、そんな気持ちでevergreenを立ち上げました。だから行っている業種は今も定めていません」石井の眼には迷いがなかった。
「価値は、他人のために動いた瞬間にしか生まれない」石井はそう言い切る。自室の掃除は自己満足に過ぎないが、誰かの部屋を磨けば歓声が返り、対価が生まれる。その原理を忘れまいと、会議では管理者が「できなかったこと」をさらけ出し、突破策を全員で練る風土を築いた。
現在300人を超えた従業員は、石井の哲学をそれぞれの枝先で実践する。「つまずく人がいたら手を差し伸べる会社であり続ける」。営利は目的ではなく結果、つまり価値を高めれば、数字はあとから茂ると信じているからだ。
石井陽介が目指す“かっこいい男”は、自分だけが照らされている姿ではない。救われた人の数と同じだけ光が反射し、森全体が明るくなる状態を言うのだろう。だからこそ、evergreenの木は幾何学のロジックを内に秘めつつ、葉を広げ続ける…価値は誰かのために生まれ、その連鎖が常緑を保つと信じて。