愛知県。ものづくりの文化が根づくこの土地で、「金融教育」という少し異質なテーマを掲げる会社がある。
マネーテラス株式会社…保険も、証券も、売らない。代わりに“考える力”を教える会社だ。その代表が、梶間勝善。彼の語る「お金」は、数字や効率の話ではない。そこには、命の重さや、人が生きてきた時間、選択の積み重ねが宿っている。「お金は、命を扱うのと同じくらい丁寧に向き合うべきものなんです」この言葉の背景には、成功と挫折、その両極を経験した一人の人生がある。

愛知県に生まれた梶間は、幼い頃から「自分の人生を自分で決めたい」という強い思いを抱いていた。自由を手に入れるために必要なもの…それが、彼にとっては“お金”だった。投資との出会いは高校時代。アルバイト先の先輩が見せた、たった一晩で増えた数字に心を奪われる。3万円は50万円になり、やがて数百万円へ。若さと勢いが、そのまま成功体験になった。
しかし19歳のとき、積み上げた資産は、市場の急変で一瞬にして消えた。「投資って、ギャンブルなのかもしれない」そう疑い、立ち止まった先で出会ったのが、企業の価値を見る投資思想だった。株価ではなく、理念。チャートではなく、人。企業説明会に足を運び、経営者の言葉を聞き、未来を信じて投資する。数多の企業と向き合う中で、彼は約2億円の資産を築くに至る。

並行して歩んでいたのが、医療の現場だった。臨床工学技士として、心臓手術や透析治療に携わる日々。命を預かる現場で、彼は「生きるとは何か」を体感していた。転機は、患者の一言だった。「先生は、投資を教える人になった方がいい」その言葉に背中を押され、30歳で金融の世界へ。だが、待っていたのは理不尽な現実だった。学歴の壁、経験の壁。たどり着いた海外不動産投資の営業で結果を出すも、2019年、悲劇が起きる。
自ら関わった投資案件が詐欺事件へと発展。知らぬ間に加担する形となり、裁判、賠償、借金。築いた資産はすべて失われ、負債は1億3000万円。家族も、信用も、仕事も消えた。「このまま終わってしまってもいいのか」夜の新聞配達、ファストフード店での仕事。ゼロからの再出発の中で、彼は気づく。儲かるかどうか。効率がいいかどうか。そんな“今だけ・自分だけ・お金だけ”の価値観が、人を不幸にする。だからこそ、教える。答えを与えるのではなく、考えさせるのだ。
そう決意し、2022年にマネーテラス株式会社を法人化 。彼が目指したのは、商品を売るためのセミナーではない。「なぜそれを選ぶのか」を自分で考え、判断できる力を育てる、本質的な金融教育だ 。
マネーテラスの金融教育について彼は言う。「魚を与えない。釣り方を教える。そんな会社です」投資だけでなく、保険、住宅ローン、人生設計。すべてを“自分で選べるようになる”ための教育だ。
梶間は今、高校や専門学校の教壇にも立っている 。彼が若者たちに伝えるのは、単なるお金の増やし方ではない。「誰のために、何のためにお金を使うのか」という、キャリア教育と融合した「生き方」の問いなのだと思う。
「失敗しても、叩かれても、沈まなければ必ず誰かが手を差し伸べてくれます。だから腐らず、むしろ『出過ぎた釘』として生きていきたいですね」一度は泥にまみれ、そこから這い上がってきた「出過ぎた釘」。梶間勝善は今日も、思いやりが循環する未来を目指して、熱く、泥臭く、金融教育の畑を耕し続けている。その眼差しは、チャートの向こう側にある「人の幸せ」を真っ直ぐに見据えていた。





