• 役職

    代表取締役会長

  • 氏名

    柴崎 方恵

  • 会社名

    株式会社マザーグース

  • URL

    https://mothergoose.jp/

心が動くままに挑み続ける

「都内にはベビーシッターがいたけれど、茅ヶ崎にはいなかったんです。だったら自分でつくろうと思いました」

1994年。結婚・出産を経てソニーを退職した柴崎方恵は、当時の日本では珍しかった「ベビーシッター業」を自ら立ち上げた。自分のためにつくったようなもの、から始まったその事業は、口コミで広がり、いまや全国に保育園や企業内保育所、イベント保育を展開するグループへと成長している。

柴崎の原点は、子どもに寄り添う“母の代わり”でありたいという思いだ。「0歳から3歳の子は、いちばん愛情を求める時期。1日10回のハグが必要だと言われています。犯罪や心の歪みの多くは、愛情不足から始まるんです」31年にわたる保育の現場で、柴崎が大切にしてきたのは「愛情を込めて一人ひとりを見守る」という当たり前の、しかしもっとも重要なことだった。

起業当初、ベビーシッターという仕事の認知は乏しく、制度も整っていなかった。どこに申請すればいいのかも分からなかった。「厚労省に電話したんです。たまたま全国ベビーシッター協会ができたばかりで、そこから始まりました」

営業は一度きり、折り込みチラシ1万枚を配っただけだったという。だが、パイロット夫人や医師、弁護士の家庭から口コミが広がり、予約がまたたく間に埋まっていった。成功の鍵を問うと、彼女は即座に答えた。「自分の感覚に素直になったんですね。下手に考えず、インスピレーションで動くんです。迷って決めた時は大抵うまくいかないので」

“勘”を信じる生き方は、ビジネスの選択だけでなく、子育てにも通じている。「子どもに『ダメ』とはあまり言いません。人に迷惑をかけないことだけ教えて、あとは自由にさせます」マザーグースの保育方針も同じだ。危なくなければ、何をやってもいい。保育士が子どものためを思って動くならそれが正解だ、と柴崎は熱を込める。この自由な社風が、保育士の創造性とモチベーションを育み、結果的に子どもたちの笑顔につながっているのだろう。厚生労働省の労働環境モニタリングで「働きやすい職場」として取り上げられたことも、その証だ。

老人ホームと保育園の融合、海外との教育提携、起業家スクールの構想…柴崎の挑戦は止まらない。「つまらないと思ったら終わり。楽しいことをやっていると、自然と人が集まります。だから挑戦する。失敗なんていくらしてもいいんです。命を取られるわけじゃないですしね。生きていれば何でもできるから」

一代で築いた保育王国の裏に、恐れを知らない前進力があった。

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