佐賀県佐賀市の静かな田園風景に、夏の朝日を浴びて輝くソーラーパネルが並ぶ。屋根の上でまばゆい光を受け止めるそれらは、暮らしに優しい電力という「血液」を送り込む社会のポンプ―アースアクト株式会社の象徴である。創業者であり代表取締役の筒井心(つつい・しん)が描くのは、「電気」を通じて地域を支え、未来へつなぐ確かな光景だ。
1978年、電話工事業を営む家庭の長男として生まれた筒井は、携帯電話の普及に翻弄される家業の倒産を目の当たりにした。「このままではまずい」と感じながらも動けなかった無力感が、後の反骨心の種になったという。26歳のとき、迷わず実家を離れ、自らの手で道を切り拓く決意を固めた。
一人で抱えた営業・経理・施工。筒井は「だからこそやるんです」と笑顔を見せながらも、背後には困難の連続があった。創業5年目、義兄の急逝と父の他界。悲しみを胸に抱えながらも、家族を支え続ける覚悟を貫いた。「もっと話をしておきたかった。ただその当時、一番辛かったのは母と姉だと思います」と筒井は静かに語る。
平成の太陽光バブルが崩れ、多くの企業が淘汰されたときも、アースアクトは倒れなかった。筒井は数字よりも「信頼」を選んだ。九州電力や国内大手メーカーとの提携を進める一方で、訪販系企業にありがちな急成長の慣れを拒絶。社員一人ひとりと向き合う時間を増やし、「ここで働けてよかった」という声が社内に広がっていった。その結果、かつての辞表は減り、企業文化には静かな重厚感が宿ったのである。
現在、アースアクトは社員35名体制で九州全域に事業を展開。長崎、熊本、鹿児島へと拠点を広げ、沖縄を除くすべての県で省エネの「緑の火」を灯す構想を進めている。テレビ局との共同プロジェクトでは、映像の力で人々の心を動かし、地域全体にエコ意識を波及させる挑戦を続ける。「誰かが新しい提案を口にすれば、反対より先に『やってみよう』の声が飛ぶ。失敗は汚点ではなく、次の物語の起爆剤だ」と筒井は語る。
社是に掲げる「挑戦」の連鎖は、失敗を恐れない勇気から生まれる。筒井が座右の銘とする言葉は、「失敗も、その後次第で武勇伝になる」まさに、苦難を乗り越えた先にこそ真の物語が待っているという信念だ。屋根に並ぶソーラーパネルが朝日に照らされるたび、地域の家々へ送り込まれる電力は、アースアクトが築いた信頼の証だ。夜、蓄えた電力が街灯をともすその瞬間、いつしか小さなエネルギーの循環は大きな希望の光へと育っている。
「人生は一瞬です。成功者とそうでない者を分けるのは、挑戦するかしないか、ただそれだけだと思います」